第三章 11



 同時刻、工場の地下に、『彼ら』はいた。
 体に緑の脈を持つ者たち――材料として集められた植人だ。
 ちょうど彼らが収容されていたのは、マリソルとルアナが対峙していた部屋の下だった。
 耳の良い者が、工場主の言葉を伝える。
「我らを殺して、毒にするらしい」
 まるで穏やかな波のように静かに、その言葉は茫洋とした瞳の者たちに伝わっていく。
「毒は兵器、兵器は戦争へ」
 彼らは、自身の扱われ方を知り、混乱しても、それを表に全面に出すことはしない。ヴェルデやリウィアイが人間に非常に近いだけで、植人は元々、違う種族なのだ。
「我々は……毒になるのか」
「この工場を、壊せぬか?」
 一人の、植人がそう言った。しん……と工場の地下は静まり返る。
「『還行(リトロバース)』」
 静寂の中へと、誰かが答えを投げ込んだ。
 ざわざわ……と、まるで梢が揺れるように、小さな波のように戸惑いと決意が交錯する。
「そうだ、『還行』」
 大地神から授かった力で、元の植物に戻り、この工場を壊そうというのだ。
「我々のため、そして我々の多くの同胞のため……」
 一人、また一人と、緑の光を発していく。暗い地下に、まるでホタルが放たれるように。
 そして光を発したものは、その形を、人から植物へと変えていった。ある者は花へ、ある者は大木へ。
 光はどんどん増えていく。やがて、工場の地下を、光が覆い尽くした。