第二章 03



 青年の小屋から屋敷をはさんで反対側に、よく手入れされたバラ園がある。そこにルアナはいた。小さな東屋に腰を下ろし、バエサ商店のご子息とかいうクストディオと、午後のティータイムだ。
「ルアナ様は、狩りはお得意ですか? よければ今度、ご一緒にいかがです?」
 クストディオという若者は、商人の息子らしく、最新のファッションに身を包んでいた。銃を撃つマネをして、狩りに誘うアピールをする。
「わたくしは、狩りに行ったことがございませんの。
 クストディオ様は、銃で兎や鳥を狩りますの?」
 小首を傾げてルアナが訊ねる。先程と同じシンプルな造りのドレスだが、それが彼女の清楚で媚びのない雰囲気を引きたてていた。
「ええ、ウチの製造している銃でね。
 アルマス商会は銃の新規開発に力を入れていないようだけど、それは何故ですか?」
 わずかな自慢とともに、相手商会への探りを入れる。これくらい、お茶の時間の世間話だ。
「わたくしはアルマスの主人になってから、いろいろと考えましたの。
 わたくしは女だけど、どうしたら父のような素晴らしい武器商人になれるか」
 アルマス商会は、今は亡きルアナの父、バジャルド・アルマスが一代で築き上げた大商会だった。それが、子宝にも恵まれず、生まれたのは女で病弱。しかも養子をとらない。一代で築かれたものは、一代で潰れると誰しもが思っていた。バジャルドが没した時、離れていった者も多い。それを立て直したのが、ルアナだ。
「それで思ったのです。
 女ながらの観点で、武器を作ろうと。殿方では気付けないことも、きっとあると」
 微かに挑発的な瞳を、彼女は正面の男に向けた。だが、それで怒るような不作法者では、彼はなかった。ふむ、と相手の話に聞き入る態度を見せる。
「それは、どんなことかな?
 わたしは男だから、わからないことかもしれない」
 そこからアルマス商会の内部を探れるかと、クストディオも話を振る。
「殿方は、すぐに武器の破壊力をひけらかしたがるでしょう。私は、大砲や銃で殺された、汚い死体など見たくないのです」
 千切れた四肢や汚物にまみれた死体は、醜く汚らしいと彼女は言う。ルアナは少し遠くを見つめながら、陶酔した目で語った。
「やはり、もっと綺麗に、もっと美しく殺さなくては」